測定ログは、そのままでは集計できない ― 欠測と固定値の見分け方
ドライブテストで記録したログは、1行に約270列が並ぶタブ区切りのテキストです。列には値が入っています。しかし「値が入っている=その指標が取れている」として集計すると、実測していない値まで実測として数えてしまいます。
実際の測定ログ4本(2端末・2日・計2,057行)を点検したときに見つかった、3つの落とし穴と見分け方をまとめます。
1. 欠測は、空欄とは限らない
値が取れないとき、測定アプリは空欄ではなく - を出力する列があります。空欄だけを欠測として数えると、この列は「全行に値がある」と判定されます。
実例です。ある日の CQI(チャネル品質指標)は、501行すべてに値が入っていました。非空率は100%です。ところが中身を見ると、501行すべてが - でした。- も欠測として数えれば、非空は0行。まったく取れていない列だった、ということになります。
この列を数値に変換しようとすると Unable to parse string "-" で処理が止まります。エラーで気付ければまだ良いほうで、変換できない値を黙って捨てる設定にしていると、「取得できている指標」として通過してしまいます。
2. 変動していない列は、測定値とは限らない
別の日のログでは、CQI の523行すべてに 5 が入っていました。同じログの LTE RSSI は、523行すべてが -94 でした。値は入っていますし、数値にも変換できます。しかし1種類の値しか出てこない列は、端末が測定値ではなく固定値を返していると考えるほうが自然です。
注意したいのは、これが機種の性質とは限らない点です。同じ端末で別の日に測ったログでは、CQI は 9〜15 の範囲で変動していました。固定値になるかどうかは、機種ではなく測定日や端末の状態によって変わります。ですから判定は「この端末は使えない」ではなく「このログのこの列は使えない」と、ログ単位で下す必要があります。
3. 点数が少ないだけの列を、固定値と決めつけない
2番目の見分け方には、行きすぎたときの副作用があります。「1種類の値しかない列は固定値」と機械的に判定すると、たまたま点数が少ない列まで切り捨ててしまいます。
例として、ある日の SecondCell_RSRQ は501行中11点しか値がなく、その11点はすべて -7 でした。1種類しかないので、そのままでは固定値と判定されます。しかしこの11点は、5G(NSA)で接続していた行11点とぴったり一致していました。つまり5Gで接続している間だけ出る、状態に依存した値であって、固定値を返し続けるセンサーではありません。値が1種類だったのは、5G接続の区間が短かったからです。
そこで固定値と断定するには最小サンプル数(ここでは30点)を設け、それ未満は「実測。ただしサンプルが少ない」という注意付きの扱いにしています。この30点という値は統計的に導いたものではなく、実務上の経験則です。ただし1〜700の範囲で動かして判定が変わるかを確認したところ、12〜523のどの値でも結果は同じでした。
判定を分けると、掲載できる指標は13本から6本になった
この3つを区別せずに「空欄でなければ取得できている」とした場合、4本のログすべてで取得できている指標は13本ありました。欠測・固定値・サンプル数を区別して数え直すと、全ログで実測と確認できた指標は6本でした。
差の7本は、消えたわけではありません。あるログでは実測できていて、別のログでは固定値や欠測だった指標です。素朴な数え方のままでは、実測値ではない固定値を根拠にして、取得できる指標を過大に記載することになっていました。
この方法でも分からないこと
- 未対応と固定値は区別できません。端末が値を返さないのか、固定値を返しているのかは、ログだけでは判断できません。分かるのは「このログで実測として使えるかどうか」だけです。
- 状態に依存する値は、点数が少なくなります。3番目の例のように、特定の接続状態でしか出ない値は判定が難しく、注意付きで掲載を止める(安全側に倒す)ようにしています。
- 検証範囲は4本です。2端末・2日ぶんのログで確認した結果であり、別の端末・別の走行では閾値の再検証が必要です。
まとめ
測定ログの点検は、値の有無を数えるだけでは足りません。欠測を表す記号、端末が返す固定値、状態に依存して点数が少ない列——これらを区別してはじめて、「この指標は実測できている」と言えます。取得できた指標を多く見せるより、どの指標がどのログで実測だったかを説明できるほうが、報告書の信頼性は高くなります。
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