電道
DENDO | RF Propagation Analysis
電波の道を、あなたのもとに
調査区分:電波伝搬 実測検証レポート 対象:広島県神石郡神石高原町 神石広域農道・福桝川大橋付近 整理番号:A01-202606 事業者:NTTドコモ Band19(800MHz帯)
CASE STUDY | 調査事例

地図は「サービスエリア内」。
その中の電波を、
現地で確かめました。

事業者のサービスエリアマップは、広い地域のカバー状況を一目で示す、たいへん有用な情報です。一方で、起伏に富む中山間地では、同じエリア内でも地形によって電波の届き方に差が生じます。本レポートは、エリアマップを補う「現地視点」の情報として、神石高原町・神石広域農道(福桝川大橋付近)を机上シミュレーションと実測の両面から確かめた記録です。同じ一本の道で、受信レベルが -70dBm 台(良好)から -120dBm 台(微弱)へ変化 する様子を捉えました。

01 | 調査の背景

同じエリア内でも、谷あいでは電波が変化する

事業者が公開するサービスエリアマップは、一定の受信レベルを満たす範囲を面的に示すもので、地域全体のカバー状況を把握するのに役立ちます。その上で、実際の電波は山稜による回折損失、谷地形での遮蔽、樹木による減衰の影響を受け、同じエリア内でも地形に応じて強弱が生じるのが、山あいの特性です。

本調査の対象は、神石高原町を東西に走る神石広域農道(福桝川大橋付近)。通学・通勤・農作業・物流に日常的に利用される生活道路でありながら、周囲を山林に囲まれ、基地局との間に尾根が介在する見通し外(NLOS)環境です。

図 1 | 調査対象区間(空中写真)SITE
調査対象区間の空中写真。福桝川大橋・神石広域農道。
神石広域農道(福桝川大橋付近)。 四方を山林に囲まれた谷沿いの生活道路。基地局との間に尾根が介在し、直接波が遮られやすい地形にある。
02 | 公式エリアマップとの対比

公式マップ上では、広くカバーされている

事業者の公式マップ上では、調査区間の周辺は黄色・紫色のいずれかで着色され、いずれもLTEのサービスエリアであることを示しています(色の違いは通信速度の区分です)。広域のカバー状況としては正確で、この地域全体がサービス対象であることが分かります。一方、面的な表示の性質上、同じエリア内の地形による細かな強弱までは表現されません。

図 2 | 事業者公式サービスエリアマップREFERENCE
事業者公式サービスエリアマップ。神石広域農道周辺。
黄色・紫色ともにLTEサービスエリアです(色は通信速度の区分を表します)。 調査区間の周辺は、黄色・紫色いずれかで着色され、地域全体がLTEのサービス対象であることが分かります。面的表示のため、同じエリア内の地形による強弱は本調査(図3・図4)で補完します。(出典:事業者公開エリアマップ/2026年5月時点)
視点

公式マップは「広域のカバー範囲」を、本調査は「その中の地形ごとの体感品質」を示します。両者は対立するものではなく、補い合う情報です。マップで対象エリアを把握し、現地調査で利用者の実感に近づける ── この組み合わせが、的確な対策につながります。

03 | 電波伝搬シミュレーション

地形を反映した予測図が示す、電波の「強弱」

実在の基地局諸元(NTTドコモ Band19・857MHz、空中線高40m、ERP +43dBm)を用い、10m解像度のデジタル地形モデル上で電波伝搬シミュレーションを実施しました。回折モデルにはDeygout法を採用し、地表被覆(植生・建物)の影響も考慮しています。

受信レベル凡例(RSRP / dBm)

CloudRF 受信レベル凡例(dBm)。-60赤から-105青までの色スケール。

図3のシミュレーションは、この凡例の配色で受信レベル(RSRP)を表示しています。色が示す目安は次のとおりです。

  • -60 〜 -70 dBm(赤・橙)── 強い
  • -75 〜 -85 dBm(黄・黄緑)── 良好
  • -90 dBm 前後(緑)── 中程度
  • -95 〜 -105 dBm(青緑・水色・青)── 弱い

着色のない領域は、予測受信レベルがこの範囲(-105dBm)を下回る、圏外に近い水準であることを示します。

図 3 | 伝搬シミュレーション(空中写真重畳)SIM 10m
CloudRF伝搬シミュレーション空中写真版。福桝川大橋の谷が青〜着色なしの微弱域。
基地局至近の強電界域(赤)から、福桝川大橋の谷(画面左)へ向けて急落。 谷部は青(微弱)〜着色なし(圏外相当)に分類された。距離ではなく、尾根による遮蔽が支配的要因。基地局からの距離は約1.3km。背景は空中写真(神石広域農道・福桝川大橋を表示)。
予測の結論

机上シミュレーションは、福桝川大橋へ向かう谷部で受信レベルが急落し、谷の奥ほど圏外相当に近づくと予測しました。基地局側は良好でも、尾根を一つ挟むだけで届かなくなる ── この予測が現実と一致するかを、次に実測で検証します。

04 | 現地実測による検証

実測は予測を裏づけた ── 同じ道で -70dBm から -120dBm へ

シミュレーション結果を検証するため、同一区間を車両で実走し、受信レベルを連続測定(GPS座標つき/通信中=DATA状態)しました。測定には G-NetTrack Pro を使用しています。

結果は明白でした。国道182号側(東)では RSRP -70〜-80dBm の良好な受信 が得られた一方、福桝川大橋へ向かって谷を西進するにつれて受信レベルは段階的に低下し、谷の奥(橋寄り)では -110〜-120dBm 台の微弱〜圏外相当 まで急落しました。同じ一本の道で、40dBm を超える落差が生じています。これは机上予測(図3:基地局側=強、谷部=急落)と、変化のパターン・地点ともに整合する結果です。

実測ヒートマップ(走行連続測定)

図 4 | 走行実測 RSRPヒートマップFIELD
G-NetTrack Pro 走行実測。東側は緑黄(良好)、福桝川大橋へ向け青紺灰へ急落。
国道側 -70〜-80dBm
良好
谷の奥 -110〜-120dBm
微弱〜圏外相当
色=実測RSRP(凡例:緑-80/青-90/紺-100/灰-110〜-120)。 国道182号側(右)は緑〜黄で良好だが、福桝川大橋へ向け谷を西進すると青→紺→灰へ段階的に急落。同一の道で40dBm超の落差を実測した。図3の予測(基地局側=強、谷部=急落)と変化パターン・地点ともに一致。LTE Band19 / 通信中(DATA)測定・GPS座標つき。
項目内容
測定区間神石広域農道(福桝川大橋付近・東西約1.5km)
国道182号側(東)-70 〜 -80 dBm(良好)
谷の奥(橋寄り・西)-110 〜 -120 dBm(微弱〜圏外相当)
区間内の落差40 dBm 超
事業者 / 周波数NTTドコモ / Band19・857MHz
測定方式走行連続測定・GPS座標つき・DATA状態
検証の結論

机上予測と現地実測は同一区間で一致しました。基地局側は良好、谷の奥は微弱 ── 同じサービスエリア内の生活道路でも、わずか数百mの走行で40dBm近く変動します。この地形による変化を地点つきで捉えることが、エリアマップを補い、利用者の実感に沿った対策へつなげる第一歩になります。

05 | 調査手法・諸元

再現可能な手順に基づく調査

シミュレーション諸元

対象事業者NTTドコモ
周波数帯Band19 / 857MHz
空中線高40 m AGL
送信出力(ERP)+43 dBm (20W)
解析解像度10 m DTM
回折モデルDeygout 94
地表被覆植生・建物 考慮
解析半径10 km

実測諸元

測定機材G-NetTrack Pro
測定指標RSRP / RSRQ / SINR
測定方式走行連続測定 / DATA
位置記録GPS座標つき・KML出力
06 | 電道が提供できること

「弱い」の先にある、「どう直すか」まで

電波の弱い場所を見つけることは出発点にすぎません。電道は、十数年にわたり中山間地の電波を実地で見てきた経験をもとに、机上モデルだけでは導けない現実的な対策まで踏み込みます。

VALUE 01

予測 × 実測

シミュレーションと現地実測を同じ地点で突き合わせ、地形によって生じる予測と実測の差(ずれ)を補正します。机上だけの分析では到達できない精度を提供します。

VALUE 02

地形を読む経験

谷でのマルチパス、尾根のナイフエッジ回折、植生減衰 ── 現場を知る者だけが見抜ける要因を読み込みます。

VALUE 03

対策の提案

不感地帯の可視化に留まらず、「どこに・どの高さで局を補えば改善するか」の候補地検討まで対応します。

本レポートは調査事例サンプルです。実際の調査では、ご依頼内容に応じて対象範囲・測定密度・対策提案の深度を調整いたします。

CONTACT | ご相談

その電波の不安、地形から読み解きます。

基地局の候補地選定、カバレッジの抜け調査、自治体の生活インフラ点検 ──

中山間地の電波について、机上と現場の両面からお手伝いします。

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